幸せを受け止めて~騎士団長は月夜に淑女をさらう~
それからはクララとアランのことが心配で気が気ではなかった。
ギュンターがことあるごとに「クララは大丈夫だろうか」と口にするので、
ユリウスも若干呆れ気味だ。

そして、クララとアランの動きに変化があったのは、約1週間後のことだった。
クララとアランの2人は王妃と接触することに成功し、
ウィリアム国王の書簡を手に入れた。
しかし戻ってきたのはアラン一人だけだった。
(クララはどうしたんだ!?)
アランに詰め寄るラーデマッハー中将の隣で、
内心ギュンターも気が気ではない。
アランの話ではウィステリアの城で客人同様にもれなされているとのことだが、
ウィステリアにとってはもしもの時の人質でもある。

(やっぱりクララを行かせるべきではなかった。こんな展開になるなんて、俺の読みが甘かったな。)
ウィリアム国王からは明日の午後、会談に招かれている。
そこにクララも連れて来て返してくれるらしい。
(俺たちは今、戦争しているんだぞ。敵国の将軍の娘っていう格好の人質をそんなにやすやすと返してくれるものなのか?)
普段は細かいことはあまり気にしないギュンターだが、
この時ばかりは一睡もできずに朝を迎えた。
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