幸せを受け止めて~騎士団長は月夜に淑女をさらう~

すれ違う2人

戦争はウィステリアの勝利で終結した。
ユリウス国王はシュヴァルツ公の罪を暴いて、
今まで我が物顔で権力を牛耳っていたシュヴァルツ公派を一掃したため、
マグノリアは大混乱に陥っていた。

シュヴァルツ公の恩恵を受けていた者たちは、
生き残りをかけてみんな必死だ。
親友のアーデルハイトの夫も失業の危機だと聞いて、
クララは心を痛めていた。
でも、自分は軍人の端くれでどうしてあげることもできない。

そして国内の変化はクララの人生にも影響を及ぼそうとしていた。
今回の戦争終結に伴って、ヴァルモーデン大将が引退を表明する。
ヴァルモーデンの後任として大将に選ばれたのは、クララの父であった。
クララは軍隊内では下級士官でありながら、
最高位の大将の娘という複雑な立場に立たされることになってしまった。
ただでさえ浮いていたというのに、最近ではますます腫れ物扱いになっている。
そしてさらにクララの心に追い打ちをかけたのが、ギュンターが騎士団を離れることだった。
ギュンターは2階級昇進して少将となり、軍の参謀本部に異動する。
唯一の心の拠り所を失って自分はやって行けるのだろうか。
そうクララが思い悩んでいた時、珍しく父から呼び出しを受けた。
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