幸せを受け止めて~騎士団長は月夜に淑女をさらう~
父親からまさか縁談を持ちかけられるとは予期していなかった。
父は根っからの職業軍人で政治の駆け引きとは無縁のような人だったので、
政略結婚を押し付けてくるような人ではなかった。
実際、兄も恋愛結婚だ。

(ファーレンハイト家のマルクス様か・・・)
ファーレンハイト家は辺境伯という爵位名の通り、領地が国境付近にある。
それでも何年かに一回は社交界シーズンには
王都に顔を出していた。
父親同士が友人ということも会って、
子供の頃は一緒に遊んだ記憶がある。
最後に会ったのはいつだろうか。
クララの中ではマルクスはやんちゃな男の子というイメージなので、
優しそうに笑う写真の青年とどうも結びつかない。

母が言い出したお見合いならいつものように受け流すが、
父から勧められた縁談はそうはいかない。
父は有言実行の人間だ。家同士の付き合いもある。
(私、本当にマルクス様と結婚するの?団長への思いは諦めないといけないの?)

クララの悩みなどお構いなしとでもいうように、
ラーデマッハー中将はお見合い話をどんどん進めた。
社交のシーズンに合わせてファーレンハイト家がグラディオーレンにやって来るので、
2人のお見合いを兼ねた歓迎パーティーを開くという。
< 46 / 97 >

この作品をシェア

pagetop