幸せを受け止めて~騎士団長は月夜に淑女をさらう~
だいたいこういうお見合いは形だけのもので、
2人の意志がどうであろうと婚約は既定路線なのだ。

気持ちのやり場がなかったクララは、
地方駐在から国王の護衛へと異動になった兄ラファエルの元を訪ねる。
「ラーラが訪ねてくるなんて珍しいね。」
「お兄様、お久しぶり。」
クララと向い合せに座ると、ラファエルは早速口を開いた。
「父上から聞いたよ。ファーレンハイト家との縁談が進んでるんだって?おめでとうというべきだが、ラーラがここに来たのはこの件かな?」
クララの悩みは兄にはお見通しなのである。
「マルクス殿では気が進まないか?」
「気が進まないっていうか・・・別に嫌いではありませんけど、お父様の言われるままに結婚することに抵抗があるんです。軍を除隊するのも嫌ですし。」

(ふーん。騎士団に気になるやつがいるんだな。ま、大体予想はつくけど。)
「いいかい、ラーラ。父上も母上もお前に幸せになってほしいと思ってるんだ。軍に所属するということは、いつ命の危険にさらされるか分からない。お二人とも心配でたまらないんだ。それは分かるね?」
「えぇ。」
「この前の戦争の時に、ラーラは一時期ウィリアム国王に囚われていただろ?あの時に父上はラーラをこれ以上軍にいさせるわけにはいかないと思ったみたいだよ。」
「そんな。私、何にも危ない目に合わなかったわ。」
「それは結果論だよ。でも次は分からない。俺が父上の立場でも、同じことを考えるよ。ラーラ、君には申し訳ないが父上は本気だ。心を決めるしかない。」
「そんな。」
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