幸せを受け止めて~騎士団長は月夜に淑女をさらう~
兄の言葉にクララは落胆した。
父は一度言い出したことは絶対に曲げないのは昔からだ。
頭が切れて、悪知恵も働く兄なら何か良い案を思いついてくれるのではと
かすかな望みをかけて来たのに。

「父上の考えは変えられない。だけど変えられるかもしれない相手は1人いるよ。」
思いがけない兄の言葉にクララは顔を上げる。
「結婚はクララ1人でするもんじゃないだろ?相手がいるじゃないか。」
「マルクス様のこと?」
「今度会った時にクララの正直な気持ちを話してごらん。もしかしたらクララの気持ちを分かってくれて、一緒に戦ってくれるかもよ。マルクス殿にも心に思う相手がいるかもしれないしね。」
絶望しかなかったクララの心に瞬く間に希望の光が差し込む。
お見合い写真のマルクスは優し気で若干頼りない感じはあったが、
クララの話は聞いてくれそうだ。
「そうね。そうしてみるわ!あー、なんだかすっきりした。やっぱりお兄様に話してみて良かった。」
「破談して軍に復帰したければ、その時は私も力になろう。幸い、私は今国王陛下の側近のお役目に就いている。保証はできないが口利きはしてやれる。」
「ありがとう!そしておやすみなさい。」
「あぁ、おやすみ。」

幾分晴れやかな表情で帰って行った妹を見送って、
ラファエルはふっと笑みをもらす。
(さーて、我が妹の心を捉えた男はこの先どう出るかな?)
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