幸せを受け止めて~騎士団長は月夜に淑女をさらう~
「どうしたの急に?何かあった?」
「あのね、急で申し訳ないんだけど私、今日で騎士団を退団するから。」
「え、何で?」
「どうして急に?」
ルーカスとレオンは矢継ぎ早に質問する。
当然だろう。クララが退団する話など、騎士団の中で誰ひとり知らないのだから。

「家の事情でいろいろとあって・・・ほら、私もいい歳でしょ?お父様もお母様もうるさくてさ。」
「それって誰かと結婚するってこと?」
「まぁ、そんな感じ。」
「そっか。残念だけど、それなら仕方ないよな。名家のお嬢様は大変だな。」
「でも、団長の送別会には出るだろ?クララもめっちゃお世話になってたし。」
「急いで家に帰らないと行けなくて、ちょっとそれは難しいかも。」
「まじかよー。じゃあ最後、団長に挨拶ぐらいしていけよ。」
「そうね、ルーカス。そうするわ。」
「クララが退団しても、俺たちはずっと同期で仲間だから。またどこかで会えるといいね。」
「うん。レオンも元気でね。」

ルーカスとレオンと握手を交わして別れを告げると、
クララはギュンターの執務室へと向かった。
もうそろそろ送別会が始まる。
ギュンターはまだこの部屋にいるのだろうか。
(どうかいませんように!)
そう願いながらノックすると返事はない。
そっとドアを開ければ部屋は既に暗く、ギュンターは不在だった。
クララはホッと肩をなでおろすと、準備していた手紙を執務机に置いて足早に退出する。
そのまま誰にもすれ違うことなく、騎士団を後にしたのだった。
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