幸せを受け止めて~騎士団長は月夜に淑女をさらう~
ギュンターは長い間ともに過ごしてきた仲間たちに囲まれて、
楽しい時間を過ごしていた。
入隊から今まで、王位継承戦争やウィステリアとの戦争など様々なことがあった。
戦いの中で命を落としてしまった仲間もいたが、
こうして穏やかな時間を過ごせるとは幸せだった。

ただ送別会の途中から違和感を感じていた。
食堂のどこにもクララの姿がないのだ。
騎士団内でクララは紅一点なので、どこにいてもすぐに見つかる。
こういう時、クララは同期の2人と一緒にいるか、
隅っこで大人しく座っているかのどちらかなのだが
今回はそのどちらでもない。
具合でも悪いのだろうか?

ギュンターはタイミングを見計らって、
ルーカスとレオンの近くに移動する。
お酒を注ぎ交わして他愛無い話をした後に、
さりげなく聞いてみる。
「クララは今日は具合でも悪いのかな?」
ギュンターの問いかけに、ルーカスとレオンは顔を見合わせる。
「団長、クララから聞いてないんですか?」
先に口を開いたのはレオンだ。
「聞くって、何を?」
ギュンターは嫌な予感がした。
「あいつ、今日付けで騎士団を退団したんですよ。」
「クララが退団?」
初めて知った事実にギュンターはショックを隠せない。
騎士団を退団しようと思ったら、自分に除隊願いを提出しなければならない。
それがされてないということは、クララの場合父親に直接提出したということか?
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