幸せを受け止めて~騎士団長は月夜に淑女をさらう~
「君たちは理由を知っているのか?」
「詳しくは知らないんですけど、どこかの御曹司と結婚すると言ってました。」
一番聞きたくなかった答えにギュンターは愕然とする。
「そうか。」
その後、ルーカスとレオンと何を話したのか正直、ギュンターには記憶がなかった。
内心は送別会どころではなかったのだが、
自分のために開いてくれている送別会を途中で抜けるわけにもいかず、
結局ギュンターが自室に帰れたのは深夜を過ぎてからのことだった。

(やっと解放された・・・)
ふらふらした足取りで自室に戻ったギュンターは執務机に置かれた一通の手紙に目が留まる。
(書類は綺麗に片付けたはずだったけど。)
手紙を手に取ってその封蝋を見た瞬間、
ギュンターは酔いが一瞬で冷める。
(この馬蹄のモチーフは・・・クララからの手紙じゃないか。)
急いで封を開けると、その手紙の内容を読む。
何度読み返しても書いてあることは変わらないはずなのに、
何度も何度も読み返した。

その手紙には、
挨拶もせずに騎士団を去ることへの謝罪と、
父の勧めでお見合いをすることになり、結婚する予定であることが書かれていた。
そしてその手紙の最後。
”騎士団に馴染めなかった私に優しく手を差し伸べてくださってありがとうございました。団長の温かい眼差しが大好きでした。いつまでもお慕いしています。”
そう書かれた部分を何度も指でなぞる。
「私も君の情熱的でキラキラした瞳が大好きだったよ。」
たった一人しかいない部屋の中で、ギュンターはそう呟いた。
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