幸せを受け止めて~騎士団長は月夜に淑女をさらう~
翌日、参謀本部に異動したギュンターは
同じく着任したばかりのラーデマッハー中将をはじめとする、
軍の幹部メンバーに挨拶回りをする。
少将という位になるとやはり周りからの扱いも変わり、
ギュンターは寂しさを感じる。
それに幹部メンバーの中では自分が断トツで最年少なので
いろいろと気を遣わなければならない。
慣れるまでは時間がかかりそうだ。

新体制の初日だから、
親睦を深めるために今日は昼食を一緒にとろうという
ラーデマッハー大将の呼びかけで
幹部メンバー一同は本部の食堂の2階を貸し切ってランチをすることになった。
軍の方針をどうしていくかや上層部の裏話などの雑談に花を咲かせていると、
ファルツ中将がラーデマッハー大将に話しかける。
「そう言えば、大将のお嬢様の除隊は昨日付でしたな。小耳に挟んだのですが、ファーレンハイト辺境伯のご子息とお見合いするとか。」

ギュンターがまさに知りたかった情報だ。
平静を装いつつ、ファルツ中将の話に全神経を集中させる。
「情報が早いですなぁ。おっしゃる通りで、いい加減娘にも家庭を持ってほしいと思いましてね。ファーレンハイト辺境伯とは旧知の仲で、先日たまたま会う機会があってその話になったんですよ。」
「もう式の日取りはお決まりで?」
「それはまだこれから。今度、ファーレンハイト家が社交シーズンに合わせて王都にやって来るので、その時にお見合いを兼ねた歓迎パーティーを我が家で開催する予定です。家内が大張り切りで準備してますよ。」
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