幸せを受け止めて~騎士団長は月夜に淑女をさらう~
「じゃあ、マルクスはこの結婚に納得していないってこと?」
「クララが納得しているんだったら、受け入れようと思ったけど。そうじゃないみたいだしね。」

詳しく聞けば、
なんとマルクスはマグノリア南部と国境を接しているとある大公国の
大公の姪にあたる女性と恋愛中なのだとか。
まだ両親にも紹介していない秘密の恋だったために、
急遽持ち上がった婚約話を辞退することが出来なかったそう。
クララにも想い人がいれば、
自分の恋をあきらめずに済むかもと期待していたらしい。

「クララはその人と付き合ってるの?」
マリウスの問いかけに赤面する。
「いや、付き合ってはないけど。私の片思いっていうか、自惚れかもしれないけど両片思いみたいな?」
マルクスのニヤニヤした顔が無性に腹立たしい。
「馬鹿にしないでよ、もう!」
「ごめんごめん、悪かった。機嫌直してよ。」
クララに謝りつつ、マルクスは咳払いして真面目な顔に戻る。
「クララさえ良かったらなんだけど。このパーティ抜け出さない?」

「パーティを抜け出すってどういうこと?」
このパーティの主役は私たちなのだ。
主役が不在のパーティなんて前代未聞である。
「昔よく、クララは侍女と服を取り換えっこしてただろ?あの侍女は今も働いているの?」
「マーサのこと?えぇ、彼女は今もまだいるわよ。って、マーサと入れ替わるってこと?」
「そういうこと。俺は弟のテオに協力してもらう。」
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