幸せを受け止めて~騎士団長は月夜に淑女をさらう~
マルクスの計画はこうだ。

パーティの最初は本人2人で登場。
ファーストダンスを踊った後、どさくさに紛れてホールを抜ける。
待機していたテオとマーサと衣装を入れ替えて屋敷を脱出する。
その後はそれぞれ想い人を連れてパーティの最後に戻って来る。

「そして最後のダンスを一緒に踊るんだ。」
未婚の男女が最後のダンスを踊ることは、婚約成立を意味する。
マルクスはこのパーティを逆手にとって、
それぞれの恋を成就させようという算段なのだ。
「貴方はそれでいいかもしれないけれど、私は上手くいくかしら。」
恋人や弟に根回ししているであろうマルクスと違って、
クララは何も準備していない。
ギュンターが自分の思いに応えてくれるか確証もなかった。

「この計画には君の兄上も賛同してくれていてね。というかこの計画を思いついてくれたのは彼だし。マーサには入れ替わりの了承をもらっている。今頃マーサは君と同じ髪型にセットしているよ。」
兄が加担しているとは思ってもみなかったが、身内に味方がいるのは心強い。
マーサは昔から顔がよく似ていたから、替え玉していてもそうそうバレないだろう。
ギュンターの件は微妙だが、やるだけやってみるしかない。

「なんか上手くいく気がしてきたわ。ほんのちょっとね。」
「交渉成立だね。計画が上手くいくように祈ろう。」
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