幸せを受け止めて~騎士団長は月夜に淑女をさらう~
ラーデマッハー大将がファーレンハイト辺境伯に目線をやると、
辺境伯も突然の展開に戸惑っているようだ。
「マルクス、このご令嬢は一体どちらのお嬢様だい?」
「ダンデリオン大公国のベアトリーチェ・ファルネーゼですわ。以後、お見知りおきを。」
さすがは大公の姪だけあって、華奢な身体ではあるものの堂々としている。
「ファルネーゼ家と言えば、大公家に連なる名門一族じゃないの。そんな家のご令嬢とうちの息子が付き合っているなんて。」
ファーレンハイト辺境伯夫人も突然の息子の告白に大慌てだ。
「そういうわけだから、父さんたち。この縁談は白紙に戻してね。」

タイミングを見計らったかのようにラファエルがオーケストラに合図を出して、
演奏が始まる。
「ビーチェ、踊ろう。最後のダンスだ。」
マルクスはベアトリーチェをリードして軽やかにステップを踏み始める。
「私たちも踊ろうか。婚約が成立したことを皆に証明しないとな。」
ギュンターはそう言ってクララを踊りへといざなった。

愛し合う2組のカップルのダンスを、招待客たちはただ温かく見守っていた。
< 70 / 97 >

この作品をシェア

pagetop