幸せを受け止めて~騎士団長は月夜に淑女をさらう~
クララにネックレスを渡したデートの日から一週間後、
ギュンターはロートシルトの実家に帰省した。
ウィステリアやハイドランジアとの交易が活発化したことに乗じて、
これらの国にもビジネスを拡大したことで
ますます裕福さに拍車がかかっているらしい。

周辺の土地も買収して、もともとデカかった邸宅はさらに拡大していた。
巷では”ロートシルト宮殿”なんて呼ばれているらしい。
金箔をふんだんに使った成金趣味全開の建物じゃないことが唯一の救いだ。
(せっかく広い土地があるなら、ラーデマッハー伯爵邸のように庭園に力を入れたらいいのに。)

大理石でできた白亜の玄関を通って広いダイニングルームに入ると、
ロートシルト伯爵夫人が満面の笑みでギュンターを出迎えた。
「まぁ、ギュンター。お帰りなさい。本当にしばらくね。お母さん楽しみにしてたのよ。」
「母上、お久しぶりです。父上はどこにいらっしゃいますか?」
「本当にせっかちね。お父様はテラスですよ。今日は天気が良いからそこでお茶しようかと思って。ささ、行きましょう。」

久しぶりに見る父は頭がだいぶ薄くなっていたものの、
同年代の親父たちと同じくビール腹を抱えて元気そうだ。
商売がうまくいっているのかとても機嫌がよく、
ギュンターの話にも積極的に耳を傾けてくれている。
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