幸せを受け止めて~騎士団長は月夜に淑女をさらう~
「それじゃあ、ギュンターは今は少将なのね。20代の若さでそこまで昇り詰めるなんてさすがね。」
ギュンターが軍に入る時は猛反対したくせに現金な人だ。
「さすが我が息子。国王陛下の信頼も厚く、これでロートシルト家は安泰だ。」
母と同様に父もギュンターを手放しで褒めた。
そんな2人の誉め言葉には少しも反応しなかったギュンターだが、
父の最後の言葉が引っかかった。

「父上はまだ私のことを後継者だと思ってくださっているのですか?」
「当たり前だろう。」
何を言うんだと言わんばかりにロートシルト伯爵は即答した。
「私はいまだにロートシルト家の家業を継いでいませんが。」
「継ぐ気があるのか?」
「軍に入隊した時、『いずれは家業を継ぐつもり』だと言いました。その言葉を忘れてはいません。」
「そうか。」
ロートシルト伯爵は一息つくと遠くを見つめた。
「ここ何年かの海外進出の過程で、私も考えを改めた。ギュンターさえ良ければ、私の引退後は経営権を持ったオーナーとしてロートシルトグループを引き継いでくれると嬉しい。必ずしも銀行家になる必要はない。私が死んだら、私が所有するロートシルトグループの過半数の株をお前に譲渡しようと思う。」
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