幸せを受け止めて~騎士団長は月夜に淑女をさらう~
”銀行家になる必要はない”というのは意外だった。
ただやはり世界に拡大するロートシルトグループを率いるのであれば、
父が元気なうちに学ばなければならないことは沢山ある。
「父上、母上。今まで私の我がままを広い心で許してくださってありがとうございます。あなた方の恩に報いるためにも、私は軍を除隊して、ロートシルトグループに入ろうと思います。」
「お父様の話を聞いたでしょう?こんなに早く軍のキャリアを手放す必要はないのよ。」
「いえ、私は名前だけのオーナーになるつもりはありません。父上の元で学ばせていただきたいと思います。」

ロートシルト伯爵夫人はギュンターの除隊を残念がったが、
軍を除隊することはロートシルト伯爵夫妻に会うと決めた時から考えていたことだった。
軍の任務もやりがいがあったが、
もともと秀才だったギュンターにとっても、
世界を股にかけて活躍できる仕事は魅力的な仕事に感じたのも事実だ。
(20代の最後の今が、キャリアチェンジする最後のチャンスかもしれない。)

「そうか。ギュンターにその気があるなら、私の下について働いてもらおう。外国への出張も多いから覚悟しておくように。」
「これでギュンターにお嫁さんでもいたらロートシルト伯爵家も安泰なのに。」
ロートシルト伯爵夫人のとってやはり気になるのは会社のことより、後継ぎのことらしい。
< 78 / 97 >

この作品をシェア

pagetop