幸せを受け止めて~騎士団長は月夜に淑女をさらう~
「もし相手がいないなら、わしが見繕って・・・」
「その必要はありません。」
ギュンターはすかさずロートシルト伯爵の言葉を遮る。
「結婚を決めた女性がいます。今日私が伯爵家に帰って来たのは、お2人にその女性を認めていただき祝福していただきたいと思ったからです。」
ギュンターの言葉を聞いて、伯爵夫妻は姿勢を正して座り直す。
一体相手はどんな女性なのだろうと興味津々のようだ。

「相手はラーデマッハー伯爵家のご令嬢です。ラーデマッハー伯爵には既に結婚の許しを得ております。」
「ラーデマッハー伯爵家と言えば、代々軍の要職を歴任してきた名門一族じゃないか!」
「そんなお家のご令嬢が我が家に?」
ロートシルト伯爵家は実利優先で商売上の利益になるような相手と婚姻してきたので、
ラーデマッハー伯爵家のような名門一族とは縁を結んだことがない。
2人とも興奮していた。
コホンとロートシルト伯爵が咳ばらいをする。
「もちろん私たちは大賛成だ。ラーデマッハー伯爵令嬢を心から歓迎する。またご令嬢と一緒に挨拶に来なさい。」
「ありがとうございます。クララも喜ぶでしょう。」

実家がこれほど居心地よく感じたのは子供の時以来だ。
久しぶりに実家で一夜を過ごしたギュンターは翌朝、王城へと戻って行った。
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