幸せを受け止めて~騎士団長は月夜に淑女をさらう~
朝の執務が始まる前の時間を狙ってユリウスの元を訪れると、
ユリウスはうすうす感づいているようだった。
「ついに心を決めたのか?」
「あぁ。クララと・・・ラーデマッハー伯爵令嬢と結婚する。」
「それはめでたい。おめでとう。」
素直にユリウスが祝福してくれるので、照れる気持ちが大きくなる。
「それでさ、ここいらで軍を除隊して父の仕事を手伝おうと思うんだ。いずれ俺が引き継ぐからな。」
「ロートシルト家のビジネスはマグノリア経済でも重要だ。お前の優秀さは私も認めているし、お前がロートシルトグループを率いてくれるなら今後も安心だよ。それに・・・」
ユリウスはちらっと側に控える護衛に目線を走らせる。

「妹の嫁ぎ先が無事に決まって、私の側近も大いに安心していることだろう。ね、ラファエル。」
「全くですよ、陛下。私がどれだけアシストしたことか。」
ラファエルの嫌味ったらしい物言いはあいかわらずだが、ギュンターには気にならなかった。
「お心遣いに感謝しますよ、義兄上。」

ユリウスへの報告が終わったら、次は自身の上司であり、義父となるラーデマッハー大将だ。
ラーデマッハー大将はギュンターの意志を尊重してくれた。
除隊することに難色を示すかと思ったが、それに関しても特に反対せず。
ギュンターを慕ってくれていた後輩たちからは引き止めの声も上がったが、
クララとの結婚もあわせて最後は心から祝福してくれた。
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