幸せを受け止めて~騎士団長は月夜に淑女をさらう~
途中に何度か休憩を挟みながら数時間馬を走らせると、
とある小さな村に到着した。
「ジジの言っていた目的地はここか?」
ユリウスがジゼルに話しかけると、ジゼルがニコニコと微笑んで頷く。
ギュンターも馬から降りてあたりを見回すが、
牧場が点在するのどかな田舎町だ。
王妃はこの村にどんな用事があるのだろう。

「こっちです。」
王妃は手招きをして村の中に入っていく。
村人たちは突然、この国の王と王妃が現れたのでちょっとしたパニック状態だ。
あっという間に人だかりが出来る。
集まって来る村人ににこやかに手を振ると、
王妃はとある一軒家で足を止める。
「いらっしゃるといいのだけど。」

コンコンとノックするとしばらくしてドアが開いた。
10歳ぐらいの少年が顔を出す。
「あのどちら様で・・・」
突然目の前に現れた王妃に少年の口があんぐりと開く。
当然の反応だろうとギュンターは思った。
「お久しぶりですね。私のこと覚えてくださってますか?」
王妃が声をかけると、少年は声にならない声をあげて奥の方に走って行った。
しばらくすると少年が母親と思しき女性を連れて戻って来る。

「王妃様。お久しぶりです。」
「ご夫人もお元気だったのですね。またお会いできて本当に良かった。」
王妃は女性とがっちり握手を交わす。
どうやら王妃はこの親子と知り合いのようだ。
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