捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました2
 こちらとて、わかってくれと言われても無理なものは無理だ。
 どうしてこんな面倒な事態になってしまったのか、泣きたくなった。

 とりあえずレッドベリルどころではなくなったので、アレスがクリフ商会長を抑えている間に他の店員を呼んできた。

 獣人は番を見つけると興奮状態になり、時折手がつけられなくなるらしい。困った習性だと店員は苦笑いしていた。

 こういう時は種族にあった鎮静剤を使用することで、強制的に眠らせるという。店員は香水のような小さなボトルを持って、三階へと一緒に来てくれた。

「離せっ!! オレは彼女と添い遂げるんだ!! オレには彼女しかいないんだー!!」
「黙れ、俺の妻だ。絶対にお前に渡さん」

 クリフ商会長の絶叫とアレスの本気の怒りを孕んだ声が聞こえてくる。状況はさらに悪くなっているようだ。
 アレスが後ろから羽交締めしていて、クリフ商会長が力の限りもがいている。

「うわ、会長ってばめちゃくちゃ興奮してるなあ」

 そう言いつつも、リス族の店員はシュッと香水をクリフ商会長に振りかける。柑橘系の爽やかな香りが辺りに漂った。

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