捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました2
 私は昨日一秒でも早くラクテウスに帰ると決意したのだ。他に方法はないのかとクリフ商会長に食い下がった。

「もっと早く手に入れる方法はありませんか? 自分で素材を探すこともできないのでしょうか?」
「うう〜ん、できなくはないけどな……かなり危険な場所にあるんだ。ロザリアさんの安全を考えると勧められる方法じゃねえな」
「なるほど、それでしたら心配には及びません。私とアレスは竜人の番ですから、他の方より頑丈です」
「ああ、竜人なのか! それなら大丈夫か……お連れさんはどうする?」
「当然、私もついていく。こう見えて剣も魔法も鍛えているからな」

 山では調子悪そうだったのに大丈夫かと不安になったが、本人がここまで言うなら仕方ない。私も多少なら戦闘ができるし、アレスがいれば私たちが魔物と戦うことはあまりないだろう。
 今までの素材集めも、私はほとんど戦闘に参加してこなかった。

「それでは、クリフ商会長。レッドベリルが採取できるポイントを教えていただけますか?」
「ロザリアさん、オレのことはクリフでいいよ。あとレッドベリルの採取ポイントまでは、オレが案内する」
「ではクリフ様。本当に私たちだけで結構ですから、どうか……」
「このシトリン商会で、これだけ早くレッドベリルを用意できるのには理由があるんだ」

 クリフ様の顔つきが今までと違う。商売の取引をするかのように、本心を隠し鋭い視線を向けてきた。

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