捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました2
「いえ、アレスが心配するといけませんので、もう戻ります」
「……王太子妃の義務について、以前お話したのを覚えていますか?」
「はい……覚えています」

 ハイレット様の呼びかけに足をとめたのが失敗だった。王太子妃の義務と言いつつ、ハイレット様に嫁げと無茶苦茶な話をされた。セラフィーナ様は帝都に戻ったし、もう終わったものと思っていたのになぜ蒸し返すのだろう。
 販路確保のためにオースティン伯爵と契約も交わしたというのに、まだなにかあるのだろうか?

 うまく逃げられなかったと、こっそりため息をつく。
 噴水の前には白いベンチがあり、ハイレット様はそこに腰を下ろした。私も促されて渋々ベンチの端に座る。

「ロザリア様、貴女の望みはラクテウスの繁栄で変わりないですか?」
「はい、それは変わりありません。アレスの妻として役目を果たします」
「そうですか……おかわいそうに」

 かわいそう? いったい私のなにがかわいそうなのか?

「ロザリア様、貴女はどう足掻いても私の妻になる道しかないのですよ」

 またこの話か。前にも言ったが、そんなことはありえない。私の夫はアレス以外にいないのだ。

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