捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました2
 いったいどんなものが来るのかと、アレスの視線の先に目を向けた。

「えっ! バハムートよ……しかもこの数!!」
「ざっと見て二十匹くらいですね」

 眉根を寄せるアレスは、それでも冷静さを失わない。
 だけどバハムートはドラゴンに匹敵するほど強い魔物だ。それが群れをなしてやってきたら、さすがのアレスもタダでは済まないだろう。

「おいおい! ヤバいぞ! これは素材の採掘どころじゃねえ!!」
「ここはアレス様が一番お強いですから、魔物をお願いいたします! 私たちはロザリア様をお連れし——」

 クリフ様とハイレット様が撤退を進言する。それはもっともな意見だ。けれどアレスに引く様子は微塵もない。

「大丈夫です。お嬢様、一匹一分として、二十分ほどお待ちいただけますか?」
「いいえ、私も一緒に行くわ。この状況でアレスをひとりにできるわけないでしょう」

 やはりアレスはバハムートを討伐するつもりだった。でもこんな危険な討伐をひとりで行かせるわけにはいかない。

「ですが……少々見苦しい姿になるのです」
「だからなに? そんなことで私の愛が消えることはないわ」
「……そうですね。では一緒に行きましょう」

 いつもの穏やかな笑みを浮かべて、アレスは手を差し出した。私は躊躇することなく、アレスの手を取る。
 なにがあっても離さないように、きつく握りしめた。

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