捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました2
「なんのことでしょうか? もしかしてお茶がお口に合いませんでしたか?」
「人間にとっては無味無臭の毒かもしれないが、竜人は味覚も嗅覚も獣人以上だと知らないのか」
「……っ!!」

 しまったというようにメイドが顔を歪ませた。慌てて逃げ出そうとするが、いくらドアノブを操作しても開かない扉に絶叫する。

「お願い! ここを開けて!! 失敗したの! ねえ、そこにいるんでしょう!? 開けてよーっ!!」
「無駄だ。防音と遮断の結界を張ってある」
「そんな……」

 力なく座り込むメイドは真っ青になって、ガタガタと震えていた。

「誰がお前に命令した?」
「……い、言えません。言ったら弟が殺されるんです!」
「そうか、人質に……」

 まあ、あいつらのやりそうなことだなと、妙に納得してしまった。ロザリアなら、人質に取られている弟も助けようと言い出だすなと考えていた。

「お願いします! どうか見逃してください!!」

 そう言ってメイドが俺の足にしがみついてきた。弟を助けたくて必死に縋ってきていると、思っていた。

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