捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました2
 皇帝の言葉に被せて言葉を発したのは、転移魔法で姿を現した竜王様だ。
 透き通った水色の髪を揺らして、私に駆け寄ってくれる。だけど心配というより、政務から逃げ出す理由ができて嬉しいと顔に書いてある。しかも、この状況にわくわくしているようだ。

「竜王様、申し訳ありません。皇帝が偽物だと破ってしまい……追跡の魔法もかけておいて助かりました」
「へえ、僕が心を込めて書いた書類を皇帝がね……」

 竜王様はどこまでも冷酷な視線を皇帝に向けている。皇帝はもう指一本すら動かせず、硬直しているだけだった。さすがにハイレットも言葉が出ないようで、執務室は一瞬だけ静寂が支配する。

「では竜王様、このまま私が進めても問題ないでしょうか?」
「もちろんだよ。せっかくだからロザリアちゃんの裁きを見ていこうかな」
「父上、政務は大丈夫なのですか?」
「だってさ、義娘が困っているのに放っておけないだろう?」
「……わかりました。お嬢様のためなら仕方ないですね」

 こういう時だけはアレスと竜王様の息がぴったりだ。
 
「それでは、帝国の高官以上の方、高位貴族の方、騎士団長などその他にも帝国の中で力のある方を、すべて集めてください」
「いったい、なにをするというのだ……!?」
「ただ私の希望をお伝えするだけです」

 それ以上はなにも答えずに準備を進めさせた。

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