捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました2
 店員が一瞬ぼーっとしたけれど、ハッとして言葉を続ける。

「お待たせいたしました! おふたり様でしょうか?」
「ああ、できたらテラス席がいいのだが」
「かしこまりました。ご案内いたします」

 このカフェはテラス席もあって、この季節は温かい日差しの下、春の心地よい風を感じながらスイーツが堪能できる。アレスと対面で席にかけた。周りにはカップルや若い女の子たちが、スイーツを頬張って笑顔を浮かべている。

「アレスはなにを頼む?」
「そうだな……アイスコーヒーとベイクドチーズケーキかな」
「私は季節のフルーツティーと苺タルトにするわ」

 店員に注文を済ませると、その後はどうしようかとふたりで相談を始めた。アレスの濡羽色の艶髪が風になびき、夜空の瞳がキラキラと輝く。毎日見ている私ですら見惚れるほど絵になっていた。
 そんなアレスを見た周囲の女の子たちが、ざわりと騒ぎ出す。

「え、あの人見て! すごく格好よくない?」
「ちょっと、あんな美形見たことないわ!」
「うわー、素敵な人ねえ」

 街に出てから女性たちからはこんな声が絶えない。そういえば、執事じゃないアレスと帝都を歩くのは初めてだ。

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