捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました2
 帝都に来たついでに、あの素材屋キララにも立ち寄った。
 店主は私たちのことも覚えてくれていて、機嫌よく応対してくれる。

「おかげさまで、探していた素材はすべて調達できました。あの情報があったからこそです。ありがとうございました」
「なに言ってんだ、ただの気まぐれだ。気にすんな」
「その後、お変わりないですか?」

 なんの気なしに店主に尋ねた。

「ああ、変わんねえと言いたいとこだが、ちょっと前になんでも皇帝が変わったって大騒ぎになったんだ。あんたら知ってるか?」
「ええ、アステル帝国になったと……」

 まさか店主に原因は私ですなんて言えなくて、当たり障りのない答えを返す。
 後ろでアレスが笑いをこらえている気配がした。

「そうなんだよ! ある日突然、公示が出されてなあ。あれはさすがに驚いたな」
「きっとこれからは暮らしやすくなるはずですよ」
「そうだといいがなあ」

 話題を変えるため追加で素材を購入し、笑顔を貼り付けたまま素材屋を出てきた。

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