捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました2
 次に訪れたのはノイエール王国だ。ここは大陸の南にあり、海に面していて豪華客船の船旅が有名だ。他にも観光名所がたくさんある。

 今回の目的はこの時期に開かれる海神祭だ。漁業が盛んなこの国では年に一度、安全と大漁を祈願して海の女神に感謝する祭が行われ、その期間に数量限定だがある魔石が購入できる。

 オーロラパールという素材で、願いを込めて海に返すと女神が叶えてくれるというものだ。この祭りの目玉のひとつになっていて競争率がものすごく高い。

 街の素材屋は全滅で、港にも漁で使う魔道具や魔石を販売している店舗があった。

「アレス、あったわ! ここに残っていたわね!」
「これがオーロラパールか、見事だな」
「お客さんもコレ目当てかい。今買わないと二時間後には売り切れになるからね。ひとり一個までだから二個でいいかい?」

 購入するのが前提で話を進める店主は、すでに包装し始めている。ずいぶんせっかちな店主だけど、まあ、購入するのは間違いないので代金を支払った。

「これずっと買ってみたかったの。本当は時期が合わなくて、あきらめていたのよ」
「それならある意味、あいつらのおかげだな」
「あら、そうね。我慢した甲斐があったわ」

 耐え忍んだ一カ月だったけれど、こんな素敵なご褒美をもらえたから、もう笑い話にできそうだ。

「さっそく願いをかけてみるか?」
「ええ、もちろんよ」

 そうしてアレスの転移魔法で浜辺へやってきた。潮の香りが鼻先を掠め、波の音が優しくて心が穏やかになる。手のひらに転がる虹色の真珠は淡い光を放ち、願いを込められるのを待っていた。

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