捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました2
 このオーロラパールが数量限定なのは、漁師の妻たちが海の女神に祈りを捧げ、一年かけて丹念に作り上げるからだ。
 そんな祈りの力が宿っているから奇跡を起こすのだと、私は考えている。

 両手でオーロラパールをそっと包み込み、胸の前へ持ってくる。目を閉じて意識を集中させた。

 私は願う。
 しっかりと自分の役目を果たして、大切な人たちが幸せになりますように。
 なにがあっても、最後は笑顔でいられますように。

 目を開けて、打ち寄せる波間にパールを返した。
 シャランと音が鳴ったような気がしたけれど、打ち寄せる波に攫われすぐに見えなくなった。

 アレスの方へ視線を向けると、手の中で淡く光るオーロラパールが一段と輝きを増している。オーロラパールの光が収まると、アレスも閉じていた目を開けて海へそっと戻した。

「アレスはどんな願いを込めたの?」
「願いが叶ったら教える」
「そうなの? その時はちゃんと教えてね」

 アレスは触れるだけの口づけで返事をする。どんなことを願ったのか気になるけれど、きっと叶うはずだ。
 それから三日間に渡るお祭りを楽しんで、夜はアレスと愛を囁きあった。



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