捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました2
 帝国の外交官がいなければ、普段とは違うアレスの装いに心を撃ち抜かれて使いものにならなかった。
 いや違う、今も怪しいくらいだ。先ほどから素敵すぎるアレスから目が離せない。敬語でない口調もアレスの狂愛を思い出させて、いろいろと心臓によろしくないのだ。

「左様でございましたか。もしよろしければ、ご用が円滑に進むよう手配いたしますが……」
「それは気にしなくてよい。妻とふたりで旅行も兼ねているから急いではいない」

 他の国で聞く妻という単語が新鮮に感じた。王太子の顔をしたアレスだけでもたまらないのに、私がアレスのものだと公言されているようで嬉しさが込み上げてくる。

「それでしたら厳選の宿を用意いたしましょう」
「悪いがあまり目立ちたくないから、そっとしておいてくれないか?」
「差し出がましい真似をいたしました。なにか不自由などあれば遠慮なくおっしゃってくださいませ」
「その時はよろしく頼む」

 そんな話をしているうちに、純白の扉の前に到着した。どうやらここが晩餐会場のようだ。扉の両脇に立つ護衛騎士がゆっくりと扉を開く。
 外交官の後に続いて部屋に入ると、ロングテーブルにはすでに五人の男女が着席していた。
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