捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました2
 そしてアレスが見守る中、お父様が連れてきた名医だという年配の医者の診察を受けることとなったのだ。

「ふむ、なるほど。何点か質問してもよろしいですかな」
「はい、なんでしょう」
「吐き気はいつから?」
「船に乗ってからです。船から降りても吐き気が止まらず、今も胃がムカムカしています」
「食欲は?」
「さっぱりしたものや、口当たりのいいものなら」
「では月のものが最後に来たのはいつですかな?」
「……そういえば、一カ月以上前のことだわ」
「わかりました。ふむふむ」

 医師は魔道具も使って、私の身体を診察していたが、やがてにっこりと笑みを浮かべて口を開いた。

「おめでとうございます。ご懐妊です」
「……え、本当に?」
「懐妊……懐妊か!!」

 医師の言葉がじわじわと、私の中に広がっていく。
 竜人は子ができにくいと聞いていて、のんびりと構えていたから予想外の言葉だった。私のお腹に新しい命が宿っているのだ。

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