捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました2
 でも今日はブルリア帝国の風習に合わせて、夫婦が揃いでつける指輪を私たちもつけてきた。アレスはエメラルドの指輪を、私はラピスラズリの指輪をそれぞれ左手の薬指につけている。
 だから変に絡まれないとは思うけれど、アレスが奪われないかと焦りが込み上げてきた。

「ア、アレス! 早く皇帝陛下にご挨拶に行きましょう! ここにいたら、他の貴族たちから熱い視線が送られてしまうわ」
「確かに、それはそうだな。俺のロザリアに虫がついたら面倒だ。さっさと用件を済ませよう」

 アレスの完璧なエスコートに、学院の卒業パーティーの日を思い出す。あの時と違うのは、アレスのパートナーとして堂々と隣に立てることだ。
 皇帝の前まで来ると、アレスが挨拶の口上を述べた。

「此度は貴国の建国記念パーティーへの招待に感謝いたします。ラクテウス王国を代表して、王太子である私アレスと妻ロザリアでまいりました」
「アレス王太子殿下、ロザリア妃殿下。昨夜に続き建国記念パーティーへの参加に感謝申し上げます。どうぞゆるりと楽しんでくだされ。後ほどハイレットとセラフィーナも挨拶に向かわせます」
「いえ、それには及びません。こちらも勝手に楽しませてもらいますので、どうかお気遣いなく」

 要するに放っておいてくれと告げて、アレスは踵を返した。
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