捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました2
 父上に限らず、竜人が外交をしない理由。
 それは外交をしなくても暮らしに困らないのはもちろんだが、もうひとつ。

 この狂気あふれる独占欲があるから、外交などしないのだと理解した。

「アレス殿下! やっと追いつきましたわ……!」
「……もう用は済んだと思いますが?」
「いえ! アレス殿下をおひとりにする訳にはまいりません。よろしければ、わたくしと踊ってくださいませんか?」

 先ほどスルーしたのに懲りずに俺に提案してくるとは、随分と図太い性格のようだ。

「あいにく、妻以外の女性と踊る気はないのです」
「そんな! ロザリア妃殿下だってお兄様と踊っているのに……」
「おそらく、なにか政治的な理由があったのでしょう」
「政治的……? よくわかりませんけれど、わたくしだってお役に立てるはずですわ! なにがお望みなのですか?」

 この女にこちらの目的を言っていいものか逡巡する。うまく利用すれば、ロザリアの願いを早く叶えられるかもしれない。それなら——
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