捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました2
「ハイレット様、私たちの素材集めについてのご厚意はありがたいのですが、実は今回の旅は新婚旅行も兼ねているのです。ですから申し訳ないのですが、販路確保の件だけお願いできないでしょうか?」
「そうでしたか、ですがお気になさらないでください。お探しの素材が揃い、該当の貴族を紹介しましたら、私たちも皇城に戻りますので」

 はっきりと新婚旅行だと言ったのに、ハイレット様が引いてくれない。困った私はさらに懸念を伝えることにした。
 旅先でなにかあっては取り返しがつかない。

「ですが帝国の皇太子殿下と皇女様となれば、身の安全が最優先ですわ。警備の問題もあると思いますし、皇帝陛下がお許しにならないのでは?」
「その点はご心配なく。私も腕に覚えがありますし、陰ながら護衛はついてまいります。なりよりも竜人であるアレス様もいらっしゃいますから、安心ではないですか」

 確かに危険が及びそうなら、アレスが守ってくれると思うけれど。だからといって、この状況で当てにされるのも違うような気がする。こういうタイプの方には、はっきりお断りしようと言葉を続けた。

「いえ。そうではなく、これは私とアレスの新婚旅行も兼ねているのでご遠慮いただきたいのです」
「ロザリア様、これは両国の友好を深める交流でもあるのです。友好関係があるからこその販路確保の約束ですし、王太子夫妻であればプライベートよりも公務を優先すべきなのでは?」

 ハイレット様はこれが公務だと言い切った。

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