捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました2
 そう言われてしまうと、せっかく昨夜のパーティーで踊りたくもない相手とダンスをしてまで確約をもらった、販路確保の話も進まなくなる恐れがある。

 というか、これは旅に同行させなければ販路確保はしないと言っているようなものだ。そうまでしてラクテウス王国の後ろ盾がほしいのだろうか。
 だとしたら帝国は野心が強すぎるようだから、今後の動きには注意しなければならない。

 アレスに視線を向けると、私の方を見ていてセラフィーナ様については完全にスルーしていた。バチっとアレスと視線が合い、目だけで会話する。

(このままでは、販路拡大が怪しくなるわ)
(まったく迷惑な兄妹ですね)
(仕方ないから、このまま素材を探して貴族を紹介してもらうしかないわね)
(そうですね、さっさと終わらせて新婚旅行に切り替えましょう)

 ふうっと短く息を吐き出して、ハイレット様に私たちの意思を伝える。

「それでは、両国の友好を証明するためにもお言葉に甘えますわ」
「それはよかった! では早速出発しましょう!」

 ハイレット様の明るい声音とは反対に、私の心は重く沈んでいく。それでもラクテウス王国のためと、アルカイックスマイルを浮かべて出発した。



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