捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました2

11話 王太子妃の義務


 私たちはグラシア領へ行くために、ハイレット様が用意してくれた馬車に揺られていた。

 窓から流れる景色はすでに草原になっていて遠くに山が連なっているのが見える。道行く人たちが大きな荷物を抱え、乗合馬車や高級な装飾が施された馬車とすれ違っていった。

 グラシア領へ置く途中の街で、販路確保のためにひとりの貴族を紹介してもらうことになっている。今は夜会シーズンではないため、その貴族は領地にいるというのだ。

 長期間の移動でも身体が疲れないよう、クッション性の高い座席にアレスと並んで座っている。向かいには不機嫌なハイレット様と、やたらアレスに熱い視線を送るセラフィーナ様がいた。

「それにしても、ハイレット様がご紹介くださった素材屋のおかげでたくさんの情報を仕入れることができました。本当にありがとうございます」
「しかし、あの店主の態度はあまりにも無礼すぎる。私が帝都に戻ったら、しっかりを処罰を受けさせよう」
「そうですわ、この国の皇太子に向かってあの口の利き方はありませんわ!」

 ハイレット様を宥めて、あの素材屋の未来を守らなければいけないようだ。そもそも皇太子だと名乗ってもいないし、接客態度が悪いくらいで処罰していては民は安心して暮らせないだろう。

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