捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました2
「そうだわ、アレス殿下。これから立ち寄るオースティン伯爵領では国花が有名ですの。その花が有名な国立公園もあるので、よかったら一緒に行きませんか?」
「それでは妻にも見せたいので、四人で行きましょう」
「え、あの、ロザリア妃殿下はお兄様と公務について大切なお話があるでしょう? ですからその間、アレス殿下が退屈されないようにご案内したいのですわ!」
「それでしたらお気遣い無用です。私はお嬢様の専属執事でもありますので、おそばでお仕えするのが役目ですから」
「そ……そうですか」

 セラフィーナ様の誘いは失敗に終わり、翡翠の瞳が私を睨みつける。
 私のせいではないと思うが、なにかに八つ当たりしたいのだろう。セラフィーナ様の尖った視線は受け流した。

 だけど……疲れるわ……!!
 私だってアレスに迫られたらいい気分ではないし……まあ、アレスがはっきり断ってくれるから、すぐに心は晴れるのだけれど。でも胸に溜まったモヤモヤが消えないし、どうしたらいいのかしら。

 チラリとアレスに視線を向けると、いつもと変わらぬ狂愛を孕んだ夜空の瞳で見つめてくれる。穏やかな微笑みはいつでも私を安心させてくれた。
 そんな風に見つめ合っていると、ハイレット様の横槍が入るのも定番になりつつあった。

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