捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました2
 この三日間、常に神経を張り詰めていた。ハイレット様が用意した途中の宿では、なぜか男女別の部屋になりセラフィーナ様からアレスのことを根掘り葉掘り聞かれて辟易していたのだ。

「やっと穏やかな時間が過ごせるのね……」

 よほど疲れ溜まっていたのか、強い眠気に襲われてそのまま意識は途切れてしまった。



「——ザリアは、必ず私のものにするのだ」

 誰かに呼ばれた気がした。左頬に触れる感触がなぜか気持ち悪く感じて、意識が覚醒していく。ゆっくりと瞳を開くと、目の前にいたのはハイレット様だった。

「え、ハイレット様?」
「……起きましたか」

 驚きに一気に目が覚める。
 私はベッドに横になっていて、ハイレット様はベッドの上で左の手と足をつき、右手は私の左頬へ伸びていた。今の気持ち悪い感触は……もしかして私に無断で触れていた?
 そう気付いた瞬間に、ゾワッと鳥肌が立つ。

「ハイレット様、これはどういう状況でしょうか? 私は鍵をかけていたはずですが」

 努めて冷静を装い、平和的な解決へ向けて言葉を選んだ。

「ああ、すみません。お声がけしても返答がなかったので心配になり、オースティンに言って鍵を借りたのです。ただ眠っているだけのようでよかった」
「それなら夫のアレスに頼むべき事柄です。なぜハイレット様が……とにかく、もう起きますからベッドから降りてください」
「嫌だと言ったら?」

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