捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました2
 そう言って、ハイレット様は右手をベッドの上についた。
 予想外の返答に困惑してしまう。だって私はアレスと結婚しているのだ。そんなことはわかっているだろうに、ハイレット様がなにを言っているのかわからない。

「いいですか、ロザリア様。貴女がラクテウス王国のために尽力したいというなら、私の妻になるのが一番だと思いませんか? そうすれば皇太子妃として、ゆくゆくは皇后としてラクテウスに便宜を図れるでしょう」
「申し訳ないですが、まったく意味がわかりません。私の夫はアレス以外にありえません」
「ふむ、ですが今頃アレス様もセラフィーナと楽しい時間を過ごしていることでしょう」
「……なんですって?」

 パチッと音を立てて、心に黒い炎が静かに燃え上がる。

 私のアレスと誰が一緒にいるですって?
 アレスは私の唯一の伴侶だ。そのアレスが皇女と一緒にいると?

「ハイレット様、冗談なら笑えるものにしてください。竜人の番がどのようなものかご存じないのですか?」
「もちろん知っています。番という存在がいて、それは夫婦と同義だというのでしょう」
「ご存じならなぜ——」
「ですが貴女たちは王太子夫妻だ。一般的な夫婦とは存在意義が違う。あくまでも国のために尽力するお立場ではないのですか?」

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