捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました2
 だが、アレスはジッとこちらを凝視して、なにかを読み取ろうとしているようだった。

「アレス様、どうかなさいましたか?」
「いえ、突然のことで驚いているだけです」
「そうですか、しばらくは三人の旅になりますがよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いいたします」

 上面だけは平穏を装って、アレスとの会話をこなす。王太子なのに執事服を着て、あれこれ妻の世話をする奴の考えていることはよくわからないし、理解したくもない。

 そうして二つ目の素材を手に入れるべく、グラシア領へ旅立った。



 移動中はロザリアとアレスの会話に入りつつ、時折、馬車の窓から外の景色を眺めていた。
 もし援軍が来ればなにかしらサインがあるはずだ。それまではなるべく時間を稼いて進むしかない。

「ロザリア様、ここから先は道が悪くなるので少し進行がゆっくりになります」
「ええ、かまいませんわ。事故が起きてはいけませんから」
「ご理解いただき助かります。安全な進行をお約束いたします」

 本来なら四日でつく道のりを六日かけてゆっくりと進んだ。あまりに遅くなりすぎては、逸らした疑惑が再浮上してしまう。だけど、それでも父からの援軍の知らせは私に届かなかった。

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