捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました2
 セラフィーナはいったいなにをやっているんだ。転移の魔道具で帰ったのだから、すでに父上の耳には入っているはずだ。それなのにいまだ援軍が来ないとなると……まさか、私の計画に反対なのか?
 いや、そんなはずはない。父上だって竜人の後ろ盾を強固にしたいはずだ。

 そうこうしているうちに、オークションを仕切っているグラシア侯爵の屋敷へついてしまった。

「皇太子殿下、このような僻地まで来訪いただき心より感謝申し上げます」
「堅苦しい挨拶はいい。こちらがオークションに参加されるラクテウス王国のアレス王太子殿下とロザリア妃殿下だ。くれぐれも粗相のないように頼む」
「承知いたしました。実は先日の建国記念パーティーで、おふたりの神がかったダンスを遠くから拝見しておりました。遠路はるばるお越しくださいまして誠に恐悦至極にございます。私がグラシア侯爵家の当主、ヘンドリーと申します」

 そうして互いに挨拶を済ませオークションが開催されるまで、グラシア侯爵の屋敷に逗留することとなった。
 その日の夜遅くに、グラシア侯爵が私の部屋を訪ねてきた。

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