夕日みたいな君と,時間を忘れて手を繋ぐ。
なに考えてるんだ! と思わず声をあげれば
「あはは。こんだけ長いんだもん,ぎりぎり見えないよ」
とっと降り立った彼女の言う通り,中は"ぎりぎり"見えなかった。
ぎりぎりはセーフじゃない。
アウトだろと口を不機嫌につぐむ。
そんな俺に気がついて,彼女は俺の顔を覗き込んだ。
無防備な動作と距離に,どぎまぎして。
その動きにも同じ若干の苛立ちを憶えながら,俺はついに全てを忘れた。
あ,大丈夫そう。
みたいに窺うような顔をけらりと変えて,とっと片手で側転して見せるその人。
突っ込みどころ……!
次の動作が予測不能すぎて,俺は頭を抱えた。
そんな俺を放置してぱたぱた公園を走り巡る彼女を見て,ついほっと息を吐く。
彼女はただ,俺の目の前で自由に存在しているだけ。
なのに,俺は何を,安心して……
俺は驚いて,固まった。
固まった俺を,突然振り返った彼女は。
またいつものようにブランコへ向かい,力強く両足を乗せる。
「ほら,座って」
俺にもいつもの場所を求める彼女。
座って,鎖を囲むように両腕を乗せ,俺は空を見上げた。
沈黙が流れ,彼女が黙ってブランコを漕ぎ,俺はこちらを向かないその瞳を待つように,見つめる。