夕日みたいな君と,時間を忘れて手を繋ぐ。
笑顔でちくりと俺の心を刺すその人は,一瞬もう来るなと言っているように見えた。
だけど,一人っ子,とか。
その人が俺へ自分の事を話すのは初めてで。
不安よりも驚きが勝る。
いつも話してばかり,聞いてばかりな彼女が,それでも自分の事を話すのは初めてなのが。
本当はとても不自然だったことに俺はようやく気がついた。
それでも,なにも聞かなかった。
その人が俺に何かを聞いて欲しいような瞳で,甘えるような言葉選びで,初めて俺に心を開いて見せても。
本当はまだ心に触れられたくないと言う思いを隠しているような,ふらふらした言動を続けているから。
それに気付いてしまったから。
いつか聞くよと,誰かに謝って。
その誰かの為に,俺は聞かなかった。