夕日みたいな君と,時間を忘れて手を繋ぐ。
深夜なんて気にしない,腹を掻き乱して取り出したような,全身を思わす叫び。

そんな,音へと変換されない振動に揺さぶられ,じわりと熱が眉間に集まった。



「……誰の事も,責めないで済むように。誰の事も,守らないで済むように…1人として生きられる家に,俺はいたい」



誰も泣かずに済むように。

疲弊した心で,笑顔まで奪ってしまわぬように。

俺が俺で,クッキー生地のように姿を変えずに済むように。

恨みも敵意も無縁に生きて,愛憎を切り分けて考えられるように。

憎むことを認めなくても済むように。

考え始めれば無限にわき出てくる,そんな煌めく星ぼしに溶けるばかりだった俺の願いは



「なら,そうしようよ。こんなにも優しく育った君なのなら,きっと,ううん絶対に。真面目に取り組めば,叶うよ」



1人の女の子の,流れ星のような神秘的な涙が優しく受け止めた。



「そうでなければ,地球が今日も青と緑に飾られているはずがない。君が今,君であれるはずがない」



星がこんなにも,綺麗なはずがない。

この世の全てに言い聞かせ,本を朗読し,夢見る少女のように口遊ぶ。



trade off(とれーど おふ)だよ。君は自分から見て正しい方を選べる。より少ない機会費用で,それでも君は幸せになれるんだ」



もちろん,周りもね。

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