夕日みたいな君と,時間を忘れて手を繋ぐ。
2章 君は昼駆けるトロイメライ。
第3話 俺にも,きっとこの世の誰にも出来ないこと。
彼女に家族の話を打ち明けて以降。
彼女はまた,数日ぱったりと姿を消した。
消したと言っても,俺達の関われるあの公園に現れなくなった程度の話だけど。
数日ごときではいつもと変わらない。
それでも,あの日は特にあの人の様子がおかしくて。
俺はまた,彼女の生存すら心配になってしまう。
やっぱり,余計な話をしたのがいけなかったんだろうか。
また,前みたいに話せたらもう他には望まないと思えるのに。
なんで,どうして。
あの人は何も語らないから,いつも謎ばかり置いていく。
と,目蓋に浮かべるあのいつもの暗闇に,邪魔な光が差し込んだ。
またいつもの,朝が来る。
無理やり目蓋を持ち上げると,容赦なく朝日がカーテン越しに射した。
東向きの,いつも俺が抜け出すのに使っている窓はベッドの右側にあって。
俺はいつも右手を下にして眠るから,向かいの南窓がついた春陽の部屋と違って,朝は眩しいのが常だった。
まだ起きたくない。
日曜の休日なのに,意味もなくこんな朝に起きたくない。
今週最後のお休みなんだ,文字通り休ませてくれ。
寝返りで,ほぼ無意味だけれど日を遮る。
2度寝に興じようとしたその時に,頭を突き抜けるインターホンが鳴った。