夕日みたいな君と,時間を忘れて手を繋ぐ。
「や,おはよ」
呆然と立つ辛うじてサンダルを履いていた俺に,いつものニコニコとした顔が向けられる。
暗くていつもは良く分からなかった彼女のパーカーはグレーで,スカートは茶色を混ぜたようなピンクだった。
対比して,目の前のボサボサ頭の寝巻きを思い出す。
沸き上がってきた謎の感情に狼狽えていると
「おーい?」
そうぱちくりとした真ん丸の目が俺を捉えて,目の前で手を振った。
日中初めて会う彼女は,とても顔立ちの整った女の子で。
俺は思わず,息を呑んだ。
香りすらしてきそうなその距離に
「そう言えばなんでここに?」
冷静ぶったどこかの俺が顔を出し,尋ねてくれる。
「あーそれね。大変だったんだよ~,間違ったら恥ずかしいもん。でも,バスケットゴールの情報まで聞いてたのは正解だったな」
あの公園へ,俺がどの地域から来ているだとか。
家には何があるだとか。
そんなものを,まだ2人の時間になれない頃,確かに彼女へ話してしていた気がした。
それを覚えていて,わざわざ探しだしたと言うのだろうか。
「答えに,なってないよ」
勝手に来たり来なかったり,そしていきなりこんなところに現れたり。
それが嫌だなんて今さら思わないけど。
「逢いに来たんだよ」
「……俺に?」
「そう,君に」
いたずらに,彼女は笑う。