夕日みたいな君と,時間を忘れて手を繋ぐ。
しかも相手にそんな意図はないと言うのだから,より一層恥ずかしい。
いやでも……この人も大概紛らわしいのだ。
普通,そんなことに興味を持つ人はいないのだから。
こんな時刻にこんな場所,たった2人。
何か言うのだとしても他にいくらだって見つかるのに。
星を見ていたと聞けば,普通はそこで終わるのに。
「好きだから,だよ。俺は誰かにとっての星になりたい」
俺は地面に息を落として,上を見上げた。
この人はなんか,あんま構いたくない。
だから何もいないように観察を続行したのに。
「輝きたいの?!?」
ふ ざ け る な。
不覚にもかちんと来た俺は,眉を寄せる。
「違う,声もおさえて。人生を終えた後,星を見上げた人に思い出して貰えるような人間になりたいってこと」
「うん,それなら分かるよ」
ああと声をあげて,その人は無邪気に笑った。
この今存在する空間全てにそぐわない,そんな笑顔。
「なかなかアンニュイなことを言うんだね」
「馬鹿にしてる?」
俺はそんな笑顔を前に,10年誰にも打ち明けなかった気持ちを溢してしまった事を,早くも後悔しそうになる。
「してないよ。好かれたい,残りたい,いい人になりたい……その考え方は素敵」