夕日みたいな君と,時間を忘れて手を繋ぐ。


『やあ,こんばんは』



ふざけた挨拶の時もあれば



「おはよう,元気?」



なんて場違いなことを言う。



「やだなぁ,習い事なんかじゃ何時(いつ)なんどきもおはようなんだよ。知らないの?」



あははと何時も通り,その人はケラケラと馬鹿にするように笑った。

何時寝てるんだろう。

人の事を言えないながらも,パワフルな彼女にそんなことを考える。

俺と2人,ブランコの上。

寂しいのだろうかと,無意識に詮索してしまった。



「今日は曇ってるね」



雲を払い除けるように,その人は片目を細めて手を振る。



「星が見えない。君には誰が見える?」

「ひいばあちゃん」



答えると,その即答に彼女が目を丸くした。



「なるほど。憶えてないや」



お風呂に浸かるような,ゆったりした笑み。

それは,こんな反応しか返ってこないから,気を抜く俺はぽろぽろと話してしまうのだと気がついた,そんな瞬間だった。

< 7 / 47 >

この作品をシェア

pagetop