夕日みたいな君と,時間を忘れて手を繋ぐ。
『やあ,こんばんは』
ふざけた挨拶の時もあれば
「おはよう,元気?」
なんて場違いなことを言う。
「やだなぁ,習い事なんかじゃ何時なんどきもおはようなんだよ。知らないの?」
あははと何時も通り,その人はケラケラと馬鹿にするように笑った。
何時寝てるんだろう。
人の事を言えないながらも,パワフルな彼女にそんなことを考える。
俺と2人,ブランコの上。
寂しいのだろうかと,無意識に詮索してしまった。
「今日は曇ってるね」
雲を払い除けるように,その人は片目を細めて手を振る。
「星が見えない。君には誰が見える?」
「ひいばあちゃん」
答えると,その即答に彼女が目を丸くした。
「なるほど。憶えてないや」
お風呂に浸かるような,ゆったりした笑み。
それは,こんな反応しか返ってこないから,気を抜く俺はぽろぽろと話してしまうのだと気がついた,そんな瞬間だった。