† of Sword~剣の粛正
がらりと、病室のドアがスライドした。
この部屋にベッドは二つあるが、相部屋の人はいない。とすれば、この部屋を訪れる人間は、医師か看護師、お見舞いにやって来てくれた母か父しかいない。
悠長な憶測を胸に振り返った私は、
「――アナタ……」
「こんにちは」
そのいずれでもない人物に、思わず瞠目して驚いた。
黒髪に黒眼、日本人らしい特徴を備えているのに、外人のような雰囲気があるのは、その顔立ちがマネキン以上の精巧さで整っているから。
病院という空間で、いったいなにを考えているのだろう。彼はあの時と同じ、真っ黒い修道衣に袖を通していた。ただし、首にはなにもかかっていない。
宗教者ではないのだろうか。
「言っただろう、そのうち、現実で逢い見えようって」
綺麗な顔で笑みを作り、綺麗な所作でベッドの横に丸椅子を運んでくる。
なんてことはない動作でさえ、俳優のように洗練されている。
「あれは、夢じゃなかったんですね」
「夢は現実の延長だよ。現実は夢の延長でもある。知る人からすれば、そこは些細な境界でしかないよ」
彼は肩をすくめながら着席。まるでカウンセリングを受けるような対面だと思った。
この部屋にベッドは二つあるが、相部屋の人はいない。とすれば、この部屋を訪れる人間は、医師か看護師、お見舞いにやって来てくれた母か父しかいない。
悠長な憶測を胸に振り返った私は、
「――アナタ……」
「こんにちは」
そのいずれでもない人物に、思わず瞠目して驚いた。
黒髪に黒眼、日本人らしい特徴を備えているのに、外人のような雰囲気があるのは、その顔立ちがマネキン以上の精巧さで整っているから。
病院という空間で、いったいなにを考えているのだろう。彼はあの時と同じ、真っ黒い修道衣に袖を通していた。ただし、首にはなにもかかっていない。
宗教者ではないのだろうか。
「言っただろう、そのうち、現実で逢い見えようって」
綺麗な顔で笑みを作り、綺麗な所作でベッドの横に丸椅子を運んでくる。
なんてことはない動作でさえ、俳優のように洗練されている。
「あれは、夢じゃなかったんですね」
「夢は現実の延長だよ。現実は夢の延長でもある。知る人からすれば、そこは些細な境界でしかないよ」
彼は肩をすくめながら着席。まるでカウンセリングを受けるような対面だと思った。