† of Sword~剣の粛正
だから私は、本を読んでいたりする時に人が来たら、慌ててメガネをかけるのだ。

もっとも、度のきついメガネは今や、かける度に視界を歪曲させてくれる。目の筋肉が悲鳴をあげて熱くなる感覚は、慣れたものじゃない。

こないだそのせいで涙が滲んでしまい、泣いているのかと母に勘違いされた時には、困った。

そう、だから、困ってはいるのだ、本当は。

「そう思ってね、おみやげがあるよ、君に」

ポケットに手を入れた彼が、なにかを取り出した。

掌には少し収まりきれない、白く、楕円形のケース。

見慣れている代物であるそれは、貝のように開いた。中には、銀のフレームに収まっている二つの楕円レンズ。

メガネだった。それも、私が今使っているものと、瓜二つのデザイン。

「度は入ってない。代わりに、式が入ってる」

「式?」

「魔術の一種さ」

言って、彼はメガネを取り、フレームを広げた。かけてごらん、と手渡される。
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