† of Sword~剣の粛正
口を開いたり閉じたりした彼が、大仰にうなずく。

「あー……ああ、ああ……なるほど。驚いた。君は†を知らずして魔術を行使してるんだね。魔術は知識を探求する行為だというのに、その知識の存在を知らずして……

いいや待って。――回路……そうか、回路を使ってるんだね。たしかに†は知らなくても問題ない。

しかし参ったね、これなら西蔵の家系が廃れるわけだよ」

ひとり納得している彼は、私を置いてきぼりに話を進める。

女性よりも美しい指が、空を撫でるように、男を指した。

正確には、男が頭にかけている、ヘッドフォンと、その音源。

「そのCDプレーヤーの中身、それが君の魔術媒体か」

「っ」

男が、一歩後退した。それは動揺。つまり、図星らしい。

魔術というのがなんなのかわからないが、しかし同時に、瞬間的な納得がいく。

「私に過程のない死を与えたのは、それですか」

「うん、ほぼ間違いないね。珍しい代物だよ。マジックレコード……再生するだけで、深い理解や知識がなくても魔術を行使できる珍品さ」

男がさらに数歩、たじろぐ。

どうやら彼の言葉は的確に男を突いているらしい。
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